R15指定 長編SS

陸海空 -Caress of Venus-

第一章 第五話 -通算 第十一話-

第十一話 大文字版

Promised land -I-



11-01

 クーに数回食べさせると夏海があ〜ん、と口を開いてくるので、俺一人だけ食事じゃなく運動しているような気分になる。
 夕食が終わる頃にはクーもほぼ普段通りになってきた、気もする……

 食休みも兼ねて、リビングでまったりとテレビを見ながら雑談。
 だが、当然ここぞとばかりに要求をエスカレートさせるのが夏海流。
夏海「クー、公人の腕に抱き付くのもいいけどさ〜」
 嫌な予感がして席を立とうとする。しかし、左右の腕は既に固定され動けない。
空  「何でしょうか」
夏海「肩を抱いて貰うっていうのも良いと思わない?」
 猛禽類を思わせる瞳。
 多分今の俺の心理状態がそう見せてるだけだと思いたい……
空  「それはとても魅力的な提案です。公人さん、是非お願いします」
公人「…………」
夏海「今日はクーも手を怪我してるし、一人でお風呂入らせてあげようかなぁと思って
    たけど、クーの身体を隅々まで…」
公人「一度クーの肩を抱いてみたかったんだよね〜 嬉しいな〜〜」
 クーが口を開く前に肩を抱き寄せる。
 何か言いたげな視線を向けられるが、少し強めに抱き寄せて気を逸らさせる。
夏海「で、勿論空いた片手は私に向けられるのよね?」
 そう言うと、にっこり微笑んだ。

 時計の針が9時を回り、夏海は固まった身体をゆっくりと伸ばす。
夏海「公人、先にお風呂入っちゃってよ。私はクーに説教しなきゃいけないから」
空  「……そうですね、今だけは公人さんがいない方が都合がいいです」
 2人とも共通の認識があるのか、珍しく開放される事になる。
公人「まぁ入れって言うなら先に入るけど、クーに無茶な事言い出すんじゃないだろ
    うな」
夏海「今更クーに何言っても無駄だろうけど、公人が関わると意固地になっちゃう
    からね〜。まぁ少なくとも目の前にいると邪魔にしかならないわ」
空  「残念ですが、今日は一人でお風呂に浸かって下さい」
 確かに男としては残念だが、昨日からの攻勢で疲れているので、ありがたかった。



11-02

夏海「そうね〜。急いで出てくるようなら、今日は隅々まで磨いて貰うって事にしとき
    ましょ」
公人「それだけは勘弁してくれ…… くれぐれもクーに無茶な事するなよ」
 当然でしょ、と言う台詞を聞き流しながら脱衣所に向かった。

 湯船に浸かり、少し虚空を見つめる。
 二人に懐かれ疲れが溜まるようじゃ、どちらか決めるって時点まで心が定まってないよなぁと、ややぬる目の湯に浸かりながら考える。
 それよりも昼間の女の子は一体何だったんだろう……
 二人は何か知ってそうな雰囲気があったけど、聞けるような状況とは言えないし。
 幾度考えても思考のループに陥ってしまう。
 結局、一人で考えても答えは出ないので、身体も温まった事もあり風呂からあがる事にした。

 脱衣所から出ると二人の話し声が微かに聞こえてくる。
公人「風呂空いたぞ〜」
 その呼び声に答え、すぐ廊下に現れる二人。
空  「では、私達もお風呂に入ります」
夏海「覗きに来るくらいなら入ってきていいからね〜」
公人「するか、馬鹿者。俺は部屋の片付けでもしてる」
空  「それは残念です」
夏海「お風呂から出たら呼びに行くから部屋で待ってなさい」
 そう言うと二人は脱衣所に消えて行った。
 まぁ今日買った服片付けなきゃいけないしな……

 部屋に入ると、テーブルの上にティーカップの箱と小さなメモ。

『直してクーに渡しなさい』

 蓋を開ける。
 壊れたティーカップの破片。血の落とされていない数片の破片。
 夏海はやっぱりズルイ奴だ…… 何が効果的か理解して行動している。
 洗面所に行き、こびり付いた血を洗い落とし水気を拭う。
 部屋に戻り、瞬間接着剤を使い組み直していく。
 「俺にはこれくらいしか、クーにしてあげられる事はないんだよな……」



11-03

 一時間ほど経ったころ夏海が部屋にやってくる。
夏海「直った?」
公人「まぁ形だけはな……」
 テーブルに並べられた三客のティーカップとソーサー。
夏海「上出来。さぁ、クーの部屋に行くわよ」
 箱にカップをしまい直し部屋を出た。

夏海「クー、入るわよ」
 返事を待たずにドアを開ける夏海。それは違うと思うぞ……
 クーはテーブルの前に座って待っていた。
空  「どうぞ座って下さい」
 座る事なくドアの傍に立つ夏海。まぁそれが夏海の優しさなのか……
 俺はクーに近づくと膝立ちになり、ティーカップの箱をテーブルに置く。
 表情を曇らせるクー。
公人「俺に出来る事はこれくらいしかないから…… すまない」
 クーは少し躊躇していたが、箱に手を伸ばし蓋を開ける。
 中には形だけの使い物にならないティーカップ。
空  「……公人さんの優しさが詰まったティーカップです。
    私にとってこれ以上の記念品はないです」
 クーはうっすらと涙を浮かべ、きつく抱きついてくる。

夏海「……よかったわね」
空  「はい」
公人「あ〜、でも直せと言ったのは夏海だからな」
 身体を離すと軽く微笑む。
空  「それでも嬉しいんです」
 そう言うと強く唇を押し付けてくる。そのままバランスを崩し床に押し倒される。
公人「むっ。……な、夏海……が見て……るって…………」
 何とかクーを離そうともがくが、体勢が悪く離すことができない。
空  「私は見られていても構いません」
 話すためだけに唇を離すが、更にキスを求めてくる。



11-04

夏海「そろそろいいかな〜?」
 耳元で聞こえる夏海の声。クーはその声で顔を離す。
 だが身体は離してくれない……
 横を向くと床に寝そべり頬杖をついた夏海がいた。
空  「まだ満足していません」
公人「暴れるとまたカップ壊すかもしれないし、この辺りで──」
夏海「じゃぁベッドに行きましょ」
 にっこりと笑顔を向ける。

 いつか見た写真のように、両手を左右から引っ張られベッドまで引きずられる。
 抵抗は力が拮抗していなければ意味がないことを理解する。
夏海「クーばかりキスしてずるいと思わない?」
空  「仕方ないです。公人さんを愛する気持ちは夏海より大きいのですから」
夏海「勝手に私の愛の大きさ測らないでよねっ」
 笑いながらでなかったらケンカしてるようにしか聞こえない台詞。
公人「あの〜、俺としてはこういう事は恋人同士になってからでいいんじゃないかと」
空  「私は公人さんとキス出来るなら、恋人と認めてもらえていなくてもいいです」
夏海「別にいいじゃない。二人して公人の彼女になってあげるから」
公人「そういうのは世間的にだな──」
 発言権は夏海のキスによって奪われた。

 両肩に二人の頭が乗った状態で横になっている。
 腕枕は二人的に却下となったらしい。
空  「こうしていられるのであれば、私は公人さんの愛人でも構いません」
夏海「あら、私が公人の愛人でいいわよ? 正妻にはクーがなりなさい」
 二人とも正妻にはなりたくないらしい。
公人「二人とも勝手に話を進めるのはやめてもらおう」
空  「では、公人さんが選んで下さい。私はその決定に従うまでです」
夏海「どっちを正妻にしたいの?」
公人「つぅか、正妻決めると愛人がもれなく付いてくる環境ってどうなん?」
空  「幸せならそれでも許されるんです」
 幸せそうにクーは微笑んだ。




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2006-02-09 作成 - 2006/10/12 更新
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