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駐車場の端に設置された簡易ステージを見詰め、険しい表情で立ち尽す三人。
その空気を打ち破るように公人は口を開いた。
公人「あ…… ごめん、ケータイに電話きたみたいだ。悪いんだけど少し休憩してて」
空 「はい、こちらはお気になさらず。ごゆっくりしてきて下さい」
クーはかすかな笑みを浮かべ、離れていく公人を見送る。
夏海「クー、行くわよ……」
空 「はい」
睨むような目付きを隠そうともせずに夏海はステージへ向かっていった。
二人はステージを見ることなく周囲を見回す。そして、目当ての人物を発見した。
夏海「武藤。これは一体どういう事なのか説明して貰おうかしら?」
武藤「こ、これは夏海様にク……」
武藤と呼ばれた男は、クーの柔らかいが氷のように冷たい眼差しで言葉を告げなくなる。
空 「私をクーと呼べるのは限られた人のみです」
その言葉に萎縮し、姿勢を正して非礼を詫びる。
武藤「申し訳ありません、津川様、陸海様!」
夏海「硬くならなくていいわよ。それと様付けは困るわね」
空 「すみません、私も言い過ぎました。武藤さん、今はさん付けでお願いします」
武藤「はい、気を付けます……」
冷淡に言い放つクーと深々と頭を下げる武藤の態度見て、夏海は笑顔を取り戻す。
夏海「ほらほら、二人ともリラックスしなさい。どうせマイの仕業なんだろうし」
空 「公人さんのことでは理性的でいられない私にも非はありますね……」
夏海「取り敢えず状況を説明してもらえないかしら」
武藤「はい。……昨夜マイ様からステージを開くと伝達がありまして、企画営業部、
直営部隊ともに召集されて今に至っています」
夏海「直営部隊って…… まさか巫女装束を持ち出したのはマイなの!?」
武藤「はい、巫女部隊が控えています……」
空 「…………許せません」
問い詰めるような夏海の言葉と、静かに言い放つクーに、武藤は寒空の中
冷汗を流す。
夏海「総合戦略部に作戦案提出もなしに実行部隊まで動かすとはね〜。武藤、それがマイ
の独断だとしても、なぜ私たちに報告しなかったのかしら?」
武藤「連絡が届いたのが昨夜の十時頃でしたので、お二方にお伝えするのは……」
空 「それでは仕方ありませんね。武藤さんに非はありません」
夏海「連絡してきていたら同罪だったわね」
胸を撫で下ろした武藤が着信に気付いて携帯電話を取り出す。
武藤「申し訳ありません。少し席を外しても宜しいでしょうか」
空 「はい、構いません」
夏海「あ〜ぁ、これで公人は今日一日ブルー決定ね」
空 「…………」
二人は不機嫌な表情を隠そうともしない。
新年早々、二人きりで不満げな表情を浮かべる二人に、声をかけようとする男達が
次々と現れるが、どこからか現れては消えてゆく黒服に連れ去られる。
夏海「黒服の仕事増やしちゃったわね。まぁ、変なのに絡まれたくないし助かるけど」
空 「興味ないです」
夏海「クー。今はふてくされててもいいけど、公人が来たら年上らしいところ見せなさいよ」
空 「……では、たっぷりと甘えさせてあげます」
そこに武藤が慌てた様子で向かってくる。
武藤「大変です! 敵方第八支部とのゲームが開始されたとの報告が入りましたっ」
夏海「当たり前でしょ。元旦の、こんな場所で、馬鹿騒ぎしてるんだから」
空 「これで、リンも不機嫌になるのは確定ですね」
武藤「止める事ができなかった私の不手際です。申し訳ございません……」
夏海「別に、私たち二人はオフだからいいわよ。無理しない程度に頑張りなさい」
武藤「はい、では準備にかかります。お二人も気を付けて下さい」
走り去る武藤を眺め、二人は深い溜め息を吐いた。
喫茶店兼自宅の二階にあるリビングで増田は女性とともに新年を満喫していた。
そこに静かだがよく響く電子音を発して電話が着信を知らせる。
益田「新年から誰なんだろうね〜。 ……は〜い、益田です」
公人『……あ、マスターですか? 公人です』
益田「あ、公人君? あけましておめでと〜」
公人『あけましておめでとうございます…… のんきに挨拶してる場合じゃないんですが』
益田「どうかしたの?」
公人『神社にマイが。例の、駅前で会ったあの子がいるんです』
益田「ほ〜。あちらは新年早々がんばってるみたいだね〜」
公人『……そんなのでいいんですか?』
益田「まぁ、放っておけないよなぁ。 ……ってことらしいけどどうする?」
昼行灯といった雰囲気の抜けたマスターが、目の前にいる女性に声をかける。
公人『あ、お邪魔してしまいましたか』
益田「あ〜。構わないよ、奥さんしかいないし。それに、彼女も関係者だからね」
世知「キミが公人君? 初めまして。令司の妻で、世知といいます。よろしく」
公人『せしるさんですか? こちらこそよろしくお願いします』
世知「マイを見かけて報告してきたってことは、出動したいって考えていいのかしら?」
決意を確かめるかの如き言葉に、電話の向こうにいる公人は押し黙った。
公人『……はい。 ……俺は、二人の悲しむ顔を二度と見たくないんです』
世知はおどけたような笑顔を向けると益田に合図を送る。
益田「それじゃ相手側にコンタクト取るから、公人君は裏のガレージまで来てくれるかな」
公人『わかりました。準備お願いします』
電話を切り、益田は世知と向き合う。
益田「元旦から営業とは勤勉だな」
世知「知らないわよ。そんな報告受けてないし」
益田「……もう少しゆっくりしたかったんだけどな」
世知「勝つ自信はないってこと?」
感情を読み取らせない表情で視線を反らせると、さぁ? とだけ呟いた。
何と説明するべきか悩みつつ、二人の元へと戻る。
この人出でも目立つ二人。しかし、元気なくうなだれているように見えた。
空元気と取られようと、ここは自分から明るく接しなければと手を挙げる。
公人「お〜──」
その瞬間、左右から伸びてきた手によって拘束され、口も塞がれる。
何が起こったのか確認しようにも、その手際のよい動作によって思うように動けない。
瞬間、目の前を高速で駆け抜けるきらめく物体。
『ぐあっ!』『がはっ!』
空 「公人さんから手を離しなさい!」
そこには指の間に数枚ずつお守りを挟み、今にも投げ付けようとするクーがいた。
夏海「公人に手を出すなんて身の程を知らない連中ね」
そう言って袋から破魔矢を抜く。
公人「えっ、あのぉ……」
空 「目障りです。散りなさいっ」
その言葉とともに放たれる交通安全、心願成就、運気隆昌、無病息災、招福縁結、安産祈願。
それらは狙い違わず黒服を射抜く。
呆然とする俺に走り寄る二人。
夏海「公人、大丈夫だった?」
空 「お怪我はありませんか?」
公人「あ、うん……」
しゃがんでお守りを拾おうとするのを引き止め、代わりに拾う。
空 「ありがとうございます」
公人「いや、お礼を言うのは俺の方だから」
夏海「まぁ、ここは人通りの邪魔になるから移動しましょ」
壁際に移動し、お守りを一つ一つ丁寧にほこりを落とす。
空 「やはりお守りはご利益があります。たくさん買っておいてよかったです」
公人「え〜と、ここはツッコミ入れるところ?」
夏海は複雑そうな表情を浮かべ、視線を泳がせていた。
公人「さっきの電話の件なんだけど、急用ができちゃって帰らないといけないんだ……」
二人はその言葉に顔を曇らせる。
空 「急用では仕方ありませんね」
夏海「そっか。……こっちも友達に遊ばないかって誘われてるし気にしなくていいから」
クーは柔らかく表情を崩すと、腕の中へ滑り込んでくる。
空 「私たちも早く戻るようにしますから、公人さんも早く帰ってきて下さいね」
まるでどこに向かおうとしているのか知っているかのようにも思える態度。
『俺が守るのはこの二人』
気が付くと二人を抱き締め、その肩に顔を埋めていた。
夏海「どうしたの、公人? 人前では嫌なんじゃなかった?」
公人「……俺からは二人以外は見えない」
空 「帰ったら甘えさせてあげます。たまには年上らしいところも見せますよ」
夏海「あはは〜、クーじゃいつの間にか甘えることになるわね〜」
励ますように、普段と変わらないように振舞う二人への想いが膨れ上がるのを感じる。
顔を上げるとクーと視線が合う。
そのまま引き寄せると、だた優しく唇を重ねる。
空 「……公人さん?」
クーは驚いたかのように少し視線を上げる。
それを見て唇をゆがめている夏海にも同じように。
公人「……それじゃ、帰ったら一緒におせち料理食べるか」
空 「はい。そうしましょう」
夏海「たっくさん用意してあるんだから残さず食べさせるからね」
公人「おせち料理を一日で食べさせるなよ」
少なくとも笑顔だけは戻った二人に背を向け車に向かう。
一部始終を見ていたらしい者たちの間を抜ける。
今はもう周囲の視線は気にならない。
これから向かう先にいる敵を倒すことだけ考えていた。
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